ITボーイだったころ

令和5年10月12日 晴れ

 

 祭りのときはいつもおでんがある。肌寒くなる季節だからだろうか、祭りにはおでんが付き物なのだ。かつて祖母がうどん屋をしていたこともあり、祖母のとる出汁、それを使ったおでんが私の家のスタンダードである。

 今年は、というか此処数年、政治的な気持ち悪さから祭りから遠ざかっている。今年も例に漏れず祭りには行かないつもりであり、なんなら仕事をいれた。仕事があるので行かないと言うと祖母は「最近料理をするのがめんどくさい」と言う。おでんもできることなら作りたくない様だ。

 おでんの材料は買っている様で、作らないと決まると私に全て託した。作り方を聞いて作ってみた。出来栄えは明日以降にわかるだろう。

 味が染みてないのに妻はつまみ食いをして美味いと言ってた。意味不明だ。

 

 

 

 以前書いたが、私は以前地場大手企業のIT部門にいた。

wonatsu.hatenablog.com

 

 

 めちゃ面白く、そしてめちゃきつかった。

 

 私は基盤担当というものになった。そもそも基盤ってなんだよ。全く初心者の私は、システムのことなど全然分からない。

 

ベンダーの人(当時はそれすら分からない)「基盤担当なんですってね。特殊だから大変だろうけど、一緒に頑張ろうね」

ワイ「は、はい。頑張ります(基盤ってなんだ?)」

 

ハードウェア、ソフトウェアは分かるが、ミドルウェアってなんや?

仮想化?インターフェース?

DNSSSLAPICSV? アルファベット3文字の言葉多すぎやろ、せいぜいNTTしか分からんぞ。

 

 ただでさえ分からない用語を何種類もの言い方をするから余計わからない。

 ex)仮想サーバ、仮想化統合サーバ、統合サーバ、統合システム等

 もう、ほんとの初心者は、サーバとサーバーでも同じものと判断していいのか分からねえんだよ。

 この会社特有のもので固有名詞的なものなのか、一般的な話なのかも分からない。調べても出てこないし、用語の意味が分かっても何もつながらないから理解できない。

 

 とりあえず会議に同席させられて、分からないといっているのに次から一人で会議に出る。ベンダーの社員は基本的に優しく、周辺知識も含めて丁寧に教えてくれたが、中には初心者だと分かりながら意味不明な提案をしてくるやるやつもいた。

 毎回「持ち帰ります」と言って会議はあまり進まない。会議後は調べて噛み砕いて纏めて上司に報告。上司は他の仕事をしているので、報告する時間も取れない。報告する時間があってもこっちが会議の内容を理解していなければできない。

 会議後すぐに時間を取ってもらって、報告がてら分からないことを教えてくれたらかなり業務効率が良くなるのに、どうしてそうしないのだろう。

 私が上司ならそうする(後になって、他の上司はそうしていることも分かった。うちの上司がそういう方針だっただけだ)。

 

 そんな毎日だったが、おかげで色んなことを乗り越えながらだんだん知識が身についてきた。業務も自分で少しはこなせるようになってきたが、元来物事を俯瞰してみるのが苦手な私は、日々効率悪く育っていったのだと思う。転職して、日々の業務から離れた今になってみると、もっと上手く業務を回せるし、自分の立ち位置がどういうものだったかよく見える。本当のゴールが何かが見えていないというか、自分がどういう役を演じるべきかが分かっていない。

 ITの経験で浮き彫りになったが、以前から何となく勘づいてはいた。高校時代をもっとこう過ごすべきだったとか、大学時代はもっとこうするべきだったとか、それぞれの時代を過ぎてから気づくことがある。

 

 今もそうなのだろうと思う。何をすべきか。少し前に税理士に言われたことがあって、一つ気づいて役を演じているのだが、他にもきっとあるだろう。人は客観的に見て自身の経験に基づいて教えてくれているのだから、そういうのを参考にしたい。

 

 

 そんな感じで、てんてこ舞いな日々を送っていた。

 右も左も分からないまま上司から引き継いだ案件で思い出深いものがあるが、仮想化統合サーバの更改だ。

 

 仮想化は私のIT時代からは切っても切れないもので、転職のきっかけの一つになったのも仮想化を使ったサーバ関連の案件だ。その話は今はしない。

 

 仮想化統合サーバとは、会社全体のシステムを構成する各種システム(分散系という)を仮想化したサーバに載せて動かそうぜというもので、その仮想化サーバが入っている元のサーバのことだ。

 

 サーバは、雑に言うとコンピュータのことで、パソコンのでかい版とイメージすると分かりやすい。CPU、メモリ、DISKの三要素で構成されている。

 仮想化サーバというのは、一つの大きいサーバのそれぞれの要素を論理的に区分けして(その論理区画をLAPR エルパーという)、その論理区画使って作られたサーバだ。

 仮想化サーバを作ると、新しく物理サーバを用意しなくて良いので場所が節約でき、必要に応じてCPU、メモリ、ディスクを割り当ててやれば良いので、全部まとめて買っておけるから割安(尤も、ベンダーとの契約で使った分だけ課金するというようにするのが一般的)。

 

 イメージ的には、これまで分散システムが一戸建ての家にそれぞれ入っていたのを、マンションに入居させてしまうようなものだ。

 

 私のやった案件は、マンションが老朽化してきたので、建て替えようぜというものであった。

 上司がマンションの構成はある程度決めていたのだが、ずぶの素人が途中で引き継ぐと碌なことがない。ただ、結果としては優秀なベンダーの社員のおかげでうまく更改できた。

 

 私がやったもので、めちゃくちゃしんどかったのは、分散システムのお引越しだ。それぞれ使われていない時間帯、主に土曜の夜間にお引越しをした。

 たくさんシステムがあったので、一晩で5システム程度、10週くらいやったのだが、だいたい夜の9時ごろから移行開始して、数時間おきにやってくるチェックポイントを確認し、朝9時ごろに立ち上がるシステムの稼働確認をする。もし、チェックポイントでうまく達成できていなければ、その場で対応してもらい、最終的なリミットまでにクリアできていなければ引っ越しは一旦取りやめて後日やり直すことになる。

 

 月から金まで通常通り(コレも朝はえらい早いし、夜は遅い。想像してる時間より前後に1時間ずつズラせば大体当たってると思う)の仕事をして、毎週毎週土曜日に徹夜するのは本当につらく、ベンダーの作業担当者は、金曜日に休みを取って寝ているので、羨ましかった。

 今でも根に持っているが、サービス時間外業務を行っていた。別に、仕事とプライベートをきっちり分けて休みの日は仕事の人と絶対に合わないというわけではない。ちょっと休みの日に郵便を出すとか、人と少し話すくらいいいし、ノルマがあって見込み客が土日しか会えなければ会う。多少のことは目をつむる。しかし、毎週休みの日の夜中徹夜で無給で仕事をしていたということに良い気はしない。休日の方がきつかった。

 ベンダーだけど基盤オンリーではなく、分散システムのお守をしているアシスタント的なアドバイザー的な立場の人は、なんだかよくわからないけれど、自主的になのか私と同じようにサービス時間外をしていて、被害者(?)同士かなり仲良くなった。あの人はどういう雇用契約で働いていたのだろうか。辛かったとは思う。

 

 とにかく、そんな状況であったが、全10回に及ぶシステムの移行作業は完了した。ベンダー含めて当事者は皆きつかったが、一緒に山を乗り越えて仲良くなるのはよくある話。今でも連絡を取り合っている。